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東京物語 -普遍的な家族の日常-

映画が好きな方なら、日本映画を観ないとしても、小津安二郎監督といえば、名前くらいは聞いたことがあるでしょう。

日本を代表する映画監督・・・実は、さすがの私も時代がもっと古い作品ばかりなので、名作がたくさんあると聞いてもあまり興味が湧かず、観たことがなかったんです。

もともとは洋画ばかり観ていた方なので・・・。

最近になって、小津監督の作品について色々と読む機会があったり、自分の年齢が高くなったこともあって、日本映画の名作と言われるものを観てみたいなと思うようになりました。

そして、以前から興味があった作品が「東京物語」だったので、思い切って観てみることにしました。

観終わった時の感想は、こんなに素晴らしい作品だったら、もっと早く観れば良かった・・・でしたが、考えてみたら、今だから良かったのかも知れません。

この映画は、戦後復興期の日本で暮らす人々の本当に普通の日常が2時間とちょっとで描かれています。

言ってしまえば「それだけ」で、特別なことは何も起きません。

尾道でまだ嫁に行っていない若い次女京子と暮らす老夫婦の周吉ととみが、東京で働いている子供の家を訪ねるため、20年ぶりに東京に行くことになります。

今のように新幹線で数時間ではなく、尾道から東京に出るには一日掛かりの大旅行でした。

医者で出世頭の長男の自宅へ行き、美容院を営む長女の家に行き・・・ですが、みんな自分の仕事が忙しく、歓迎してくれてはいても、まだ数日だというのに「いつまでいるのかしら」と本音がちらちら出てきます。

兄と妹でお金を出し合って、熱海の温泉宿にふたりを行かせるのですが、そこは若い宿泊客が多く、うるさくて夜も眠れないありさま。

1泊で東京に帰ってくると、長女にあからさまに嫌な顔をされ、いたたまれずに周吉は既知の友人を訪ね、とみは戦死した二男の嫁、紀子の家に泊めてもらいます。

結局、本当に良くしてくれたのは、この紀子だけでした。

彼女は、美貌もあり、人柄が良い女性ですが再婚しようとはせず、独り身を通しています。周吉たちは、優しい紀子の将来を心配し「ぜひ再婚を」と勧めるのですが、そのやり取りが涙を誘います。

帰りの汽車の中で具合が悪くなってしまったとみを休ませようと、三男が暮らす大阪で下車したふたり。
こんなアクシデントがあったため、この旅行で自分の子供たち全員に会うことができました。

それが運命だったのか、尾道に帰ってすぐにとみが病に倒れ、危篤となってしまいます。
電報を受けた子供たちはそれぞれ尾道にやってくるのですが・・・。

最後は、親子ってこんなものという、たぶんみんなそうなんだろうけど、でもちょっと悲しいというシーンが描かれていました。

とみの葬儀が終わってから、さっさと帰ってしまった兄弟たちに、みんな冷たいと憤る京子に、残ってくれた義理の姉の紀子は「みんな自分の生活が大切なのよ」と優しく諭します。

こんなささやかな家族の日常について、本当に淡々と描いた作品でしたが、家族の絆ってなんだろうって、まったく飽きるということもなく、引き込まれて観てしまいました。

とくに、最後の最後で見せる周吉の表情が秀逸です。

これから、小津作品を色々観てみようと思います。

それにしても、昔の作品を見ると「日本語は美しい」と感じます。

紀子役の原節子さんが話すセリフが、彼女の美しい声とともに耳に心地良かったです。
今は時代が違いますから、こんな風にしゃべる人はあまりいないと思いますけど、せっかくこんな綺麗な言葉を話す日本人として生まれたからには、自分の話し方なども考えなくてはならないと深く感じました。

若い方の中には「なにこれ」と思う人もいらっしゃるかも知れませんが、今の時代だから、ぜひ多くの人に観て欲しい作品だと思いました。

東京物語(1952)

監督:小津安二郎
脚本:野田高梧、小津安二郎

出演:
笠智衆(平山周吉)
東山千栄子(平山とみ)
原節子(平山紀子)
山村聰(平山幸一)
杉村春子(金子志げ)
香川京子(平山京子)
三宅邦子(幸一の妻、文子)
中村伸郎(志げの夫)
大坂志郎(周吉の三男、平山敬三)
十朱久雄(服部)
長岡輝子(服部の妻)
東野英治郎(沼田三平)

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